リベンジの夜、鴨川を渡って
とらやでの濃密で楽しい時間をあとに、祇園から鴨川沿いを歩く。グラデーションを始めた 暮れなずむ空の下、川面を渡る風、通り過ぎる自転車の音、すれ違うランニングする人。鴨川沿いを歩く時間は、二つの印象的な展覧会と知人との再会を振り返るのにとてもいい時間。頬を撫でる鴨川の風と時間が大きく動いた自分の心をゆっくりと落ち着かせてくれるよう。今宵向かうのは、昨夜は満席で諦めた、ずっと気になっていた場所。
今日という素敵な出会いのささやかな祝杯をあげるのに、最高と思える予感がする。

「éperon」:静寂の中に佇む、白の隠れ家
賑やかなエリアを少し離れ、見つけたのは白を基調としたごくシンプルな店構え。 看板の小さな文字が「ここだよ」と教えてくれるような、控えめで清潔感のある佇まい。この入り口の向こうに、自分だけの濃密な時間が待っています



自然派ワインと本が紡ぐ、豊かな時間
店内は、外の静けさをそのまま持ち込んだような、穏やかで知的な空気が流れていました。
最初に喉を潤す、至福のペティアン
「シュワッとしたものを」というリクエストに応えて出してくれたのは、ロワールの「La Bohème(ラ・ボエーム)」。 ラベルには「Pétillant Naturel(ペティアン・ナチュレル)」の文字。繊細な泡が心地よくはじけ、歩き疲れた身体にすっと染み渡るやさしい口当たり、最高のスタートでした。

自然派ワインと「つまみ」の幸せな呼応
店内はカウンターにカップルが人組とテーブル席に私と、外の静けさをそのまま持ち込んだような、穏やかで知的な空気。フランスの小さなワインバーのような雰囲気の店内、本棚を眺めながら、スパークリングを呑む。つまみは何にしよう。

京きゅうりのピクルス タラゴン風味
このペティアンに合わせたのは、京きゅうりのピクルス。タラゴンの爽やかな香りが鼻に抜け、シュワッとした泡の刺激をいっそう引き立ててくれます。

新たな発見の絶品ロゼと、フランス産白パタのソテー(粗挽きソーセージ)
普段は白かスパークリングばかりを好んで選んでいた私にとっては新たな発見だったロゼ。ジャン=ピエール・ロビノの「L’Iris du Loire」。ピノ・ドニスのスパイシーで奥深い味わいがとてもおいしかった。 そして、自然派ワインはどれもやわかく優しい味あい。

ここへ「フランス産シポラタのソテー」。芳醇なロゼの果実味と、フランス産粗挽きソーセージの旨味のペアリングは、この晩酌タイムのハイライト。齧ると溢れる肉汁とハーブの香り、ロゼを合わせると優しく包む感じでした。もう一気にこのお店の虜になりました。

本棚の「目の保養」と、住人気分の妄想
壁際の本棚をじっくりと物色。興味をそそるタイトルが並ぶ本棚。本棚に並ぶ本は写真集、建築、小説、エッセイなど多岐にわたる。時間が許すなら、端から読みたいくらいだ。いいお店にはいい本が置いてあるもの。結局、一冊の文庫を手にして席に戻る。
「見よ、旅人よ」長田弘著
まさに今の私。その本をペラペラとページをめくりながら思うことは、こんなにお腹と心に明かりを灯し、てくれる12席だけの小さなお店の近くに住めたら、「もし、このあたりの住民になれたら……」 そんな贅沢な妄想に耽ります。

灯った火を、明日の力に
対照的な二つの展覧会、知人との再会、そして「éperon」での一杯。 一日の全ての出来事に「拍車」をかけてくれたような、素晴らしい夜。 心地よい疲れと満足感を抱き、京都の夜は静かに更けていきます。「心地よい酔いと、今日受けたたくさんの刺激を抱えて店を出る。 ふたたび鴨川のほとりへ。 川のせせらぎと夜風が、火照った心にちょうどいい。この街の住人になった気分で 街へ入っていきます。

(次回、第20弾へ)
←春の京都旅 ⑱ 「静」のモネ展から「動」の若きポーランド展へ。
立ち寄った場所
自然派ワインバー éperon
左京区 Instagram @eperon_kyoto
鴨川から少し東に位置する仁王門通り沿い、
築100年以上の一軒家はもと靴屋だった場所。
店名は、”拍車””動力のきっかけ”などを意味するフランス語。
祇園のフレンチで8年間ソムリエを務めた後、
ナチュラルワインを専門とするこの店をオープン。
鴨川散歩道
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