川面に映るオレンジ、歩き出す夜
ワインバー「éperon」を出ると、空は明るく、まだ色を残していた。
通りを渡って、鴨川べりを歩く。京阪三条駅を見上げながらの橋の下をふわふわと歩く。
空を見上げると、青さを残す空に、桜の木の枝の向こうに、白く透き通るような月が浮かんでいる。夕暮れ前だというのに、月はもうそこにいるんだ。今宵は十日月。満月へと向かう途中の、少し丸みを帯びた月。なんだか、この旅も満ちていくみたいだと思った。京都の夜に月はよく似合う。京都を訪れると、よく夜空を見上げる。京都に月は、必要不可欠の存在だと思う。


「琵琶湖まで13km」という標識のそばに、枝垂れ桜がひっそりと咲いている。
帰路を急ぐ人、川縁に座るカップル、ランニングする人、ゆっくり自転車を漕ぐ人。夕暮れどきの鴨川は、みんながそれぞれの時間を過ごしていて、その風景がとても心地よく、自分もその一部に組み込まれているのがただうれしい。束の間の住人みたいに。


上へ上がり、三条大橋の上から川面を見おろすと、空の色がそのまま水に映っている。川べりからの鴨川の眺めも、橋の上からの鴨川の眺めもどちらも甲乙つけがたい。橋の欄干に手をついて、しばらく景色を眺めていた。何度となく見ている風景に飽きることはない不思議、京都を訪れるたびに鴨川へと向かう理由はこういうことなんだろう。

先斗町、提灯の灯るころ
三条大橋を渡って、すぐの路地を石屋町へ入り、先斗町へ。

提灯に灯がはいり始めた細い路地を歩く。先斗町歌舞練場の重厚なレンガの壁、その上に白く浮かぶ月。観光客も地元の人もみな、この路地の中では夜のはじまりに心踊りながら歩いている気がする。

先斗町から高瀬川へ折れると、満開の桜が水面に映っていた。川の両側から覆いかぶさるように伸びた枝と、その逆さの影。この季節ならではの風景を愛で、どの季節の高瀬川も情緒があっていいんだよなと思わず、立ち止まってしばらく眺める。歩くと出会う風景だ。
西木屋町通りから北車屋通りの路地に入り、さらに灯りの強い河原町通りへと進むと、壁づたいにとても印象的な赤い壁にモノクロ写真がいくつも飾られていた。モノクロの色合いが往年のスターたちを際立たせ、まるでアートギャラリーのようなショーウィンドウ、誘われるようにその建物の入り口へと引き込まれる。


夜の京都BALをぶらりと
河原町通りは賑やかすぎて、目的地へ行く際に横切ることが多く、通りをゆっくり歩く機会はなかなか無い。高瀬川に続く細い路地側の赤い壁のショーウィンドウは「京都BAL」のものだった。入り口正面ではなく、横の路地にまで心を配る、その吸引力を私が実証するかのように、館内を散歩する。
6Fまで並ぶ、個性的なインテリアのスタバや色々なお店。
旅のモットー、自分のアンテナに引っかかるものの方向へ進むに従って、
気の向くまま、ショップを散策。


見つけたっ!と思ったのは、6Fのロンハーマン奥のレストルーム。
美しく豪華なレストルームのドレッサーに置かれた大きな鏡に響くメッセージ。
「人生すべて、いい日になれ Today is beautiful」という言葉。
初めての京都BAL。夜のBALは昼間とは少し違う顔をしている気がした。

河原町通りを歩いていると、クラシックなアーチの外観。
京都の街は古さと新しさが常に共存していて、目に楽しい。

京都に来たら、その時に必要なもの買う。
河原町通りから烏丸通りへ。
Ace Hotel Kyotoのサインが夜の緑の中に光っている。
この夜、新風館に寄ろうと決めていた理由があった。
お財布を新しくしたかった。
これはちょっとした持論なのだけれど、私は京都を旅をするとき、何か新しいものが必要になっものがあったら、なるべく京都で買うようにしている。下着でも、靴下でも、財布でも。「京都のどこかで買ったもの」というだけで、なんとなくパワーストーンのようにエネルギーを秘めているような特別な気がするから。そこの根拠はない。でも長く使うものほど、そういう気持ちが大事だと思っている。そして、今回の旅では買い替えようと思っていたお財布。

i ro seの財布と出会う
ショーケースの前で自然と足が止まった。
「i ro se」。その実、東京発のレザーブランドで、一枚の革を折り紙のように折って形にする、縫い目のない財布を作っている。ボタンも、ファスナーも、金具もない。ただ、革が折られているだけ。なのに、きちんと財布として成立している。
ベージュの三つ折りを手に取った。軽い。薄い。キャッシュレスの時代に、これくらいのコンパクトさがちょうどいい。革の手触りはやわらかく、持ち歩くほどに育っていく素材だという。

これにしよう、と思うのに時間はかからなかった。
出来たら、メイドイン京都のものが一番いいけれど、今回の旅ではなかなか、自分のスタイルと合うものはなかなか見つからなかった。そういう時は出会いもん。目にした時の感じとか、手にした時の感触、それを頼りにする。
購入したショップは奇しくも、
「Pilgrim Surf+Supply」
NY・ブルックリン発のセレクトショップ
「巡礼者」という名: ピルグリム(Pilgrim)は「巡礼者・旅人」を意味する。
オーナーのクリス・ジェンティールは「常に何か新しいものを探し続ける、探求心のある旅人」という想いを込めているそう。
まさに旅人の私にぴったりだ。

今日という日の奇跡を抱えて、宿へ
今日という一日が、あとはもう宿へと帰るだけ。
明日の旅のつづきのために、早めに休んでエネルギーを蓄えようと考えながら、
新風館の前の烏丸通りを渡って、南へと下っていると、
外のウィンドウが目に入った。
大垣書店のショーウィンドウに見覚えのある絵が大きく飾られていた。
「若きポーランド」展のポスター。
今朝、京都国立近代美術館で見たあの作品が、夜の街角でまた私を待っていた。
モネ展、若きポーランド展、知人との再会、ワインバーeperon、鴨川の夕暮れ、先斗町の提灯、夜の京都BALのレストルーム、高瀬川のリフレクション、i roseの財布。たった一日に、これだけのことが起きた。奇跡のような1日。旅先の奇跡は思い出として強く記憶に刻まれる。
旅の醍醐味だ。
この少女のまなざしも一緒に。


四条室町のヴィアインまで、もう少し。

奇跡みたいな夜だったと思う。
京都という街は、歩けば歩くほど、ちゃんと返してくれる。
立ち寄った場所
・鴨川べりから三条大橋
中京区・夕暮れ前の鴨川沿い散歩道
・先斗町
中京区・提灯が灯る石畳の細路地
・高瀬川(木屋町通り)
中京区・桜が水面に映る静かな川沿い
・京都BAL
中京区・四条河原町の上質なファッションビル
・ MARcourt 三条店
中京区・明治時代の登録有形文化財の路面店
・新風館
中京区・烏丸御池の複合施設
・大垣書店 烏丸三条店
中京区・烏丸通三条の路面書店
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