出町柳から京都御苑、そして「Roastery DAUGHTER & Gallery SON」へ。鯖寿司で〆る「余白」を愉しむ春の京都旅 ㉓完結編

京都旅の記録

静寂の余韻を連れて、街へ降りる

 3月から書き綴ってきた「春の京都旅」シリーズも、いよいよ今回で23回目。ついに完結編を迎えました。 今回の旅は3泊4日。二条城のキーファー展から始まったこの旅も、数えきれないほどの「恋に落ちる瞬間」を経て、最後の一日を迎えました。

京都駅での小川珈琲のモーニングから始まった、3泊4日旅の最終日。 京都国際会館のモダニズム建築に圧倒され、蓮華寺の美しい庭に心を整え、そして「鈍考/喫茶芳」の本棚の前で贅沢な本選びを楽しんだ午前中。

心が満ちて、余韻に浸りながら叡電に揺られていました。洛北の静寂の場所から、少しずつ生活の音が聞こえる街の方へと降りていく。この「日常へと戻るグラデーション」さえも、京都という街は美しく見せてくれます。

終点の出町柳から、御所へ。旅の最後に見つけた、京都の「恋する景色」の続きを綴ります。

叡電に揺られて。出町柳、暮らしの温度を感じる商店街歩き

叡山電車 車両

 

2両編成の小さな車両が「ゴトンゴトン」とリズミカルに揺れる音。洛北の空気を運びながら、窓の外には、観光地の華やかさとは少し違う、京都の人たちが普通に暮らす街並みが流れていきます。洛北の足・叡山電車、通称「叡電」だ。

ついさっきまで過ごした「鈍考/喫茶芳」での90分の余韻のまま、三宅八幡駅から乗った平日の車内は驚くほど静かで、車窓から見えるのどかな景色が、終点の出町柳駅に近づくにつれて少しずつ街の顔に変わっていく。 

叡山電車 線路と三宅八幡駅


新緑と静寂をめぐる、叡山本線沿いの寄り道

 もし時間に余裕があるのなら、叡電沿いには、心洗われるような緑の特等席が待っています。桜の季節のあとの潤いに満ちた青もみじのシーズンもおすすめ。京都の洛北エリアを走る叡山電車(叡電)の叡山本線(出町柳駅~八瀬比叡山口駅間)に乗ってめぐることができる新緑スポットをご紹介。

蓮華寺の青もみじ(三宅八幡駅 徒歩7分)

 八瀬へ向かう道沿いにひっそりと佇む、小さな寺院。
書院の間に座って、さわさわとモミジが揺れる音と見事な池泉回遊式庭園を愛でる時間は、何にも代えがたいものです。桜の季節にお邪魔した際、和尚さんから「個人的には、若葉が芽吹く頃や初夏の青もみじの季節が静かでいいですよ」と勧めていただいた場所。本好きな方なら、今回私がお邪魔した「鈍考/喫茶芳」と一緒に旅に組み込むのがおすすめです。

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瑠璃光院の新緑リフレクション(八瀬比叡山口駅 徒歩5分)

 毎年春秋に特別公開が行われる瑠璃光院。お漆塗りの鏡のような机に映り込む「リフレクションするモミジ」は、まさに別世界です。芽吹いたばかりの青葉が映り込む様子は、神秘的な美しさ。美しい苔の絨毯が広がる「瑠璃の庭」も必見です。
(※瑠璃光院 春の特別拝観:4月中旬~6月中旬頃)
⇒詳しい情報はこちら

神秘的な緑の森「下鴨神社・糺ノ森」でパワーもらう(出町柳駅 徒歩5分)

 下鴨神社の境内に広がる「糺(ただす)の森」。樹齢200~600年の木々はケヤキやエノキ、ムクが参道を包み込むように生い茂る。芽吹いたばかりの葉に光が差し込み、神秘的な美しさと澄んだ空気に深呼吸です。「瀬見の小川」や「奈良の小川」など4つの小川が流れ、清らかな川のせせらぎに耳を傾けながら、朱色の鳥居から下鴨神社本殿までの鮮やかな新緑の中を歩くだけでパワーチャージ完了です。

⇒糺の森のスポット情報はこちら

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出町柳、暮らしの温度を感じる商店街歩き

 終点の出町柳駅を降り、吸い寄せられるように向かったのは「出町桝形商店街」。 ここは、観光地化されていない、京都の呼吸がそのまま残っている場所。八百屋さんのいい声、お惣菜の香ばしい香り。

 そして自転車で行き交う地元の人たちの「おきばりやす」という挨拶。そこには、3泊4日の旅で見えてきた「生活者としての京都」の呼吸があります。 特に何かを買わなくてもいい。ただぶらりと歩くだけで、「ああ、私も今、この街の一部になれている」という不思議な充足感に包まれる。そんな「何もしない贅沢」が、旅の終わりにはちょうどいいのです。 

京都 出町座 映画館
出町桝形商店街

梨木神社の名水と、京都御苑の「日常」という贅沢

  出町柳から今出川通りを南下し、京都御苑の東にある「梨木神社」へ。 京都三名水のひとつ「染井(そめい)の水」が今も湧き出るここは、地元の方がポリタンクを持って訪れる生活に根ざした場所。旅の途中に手を清め、お水をいただく。そんな何気ない儀式が、旅の終わりに向かう背筋をすっと伸ばしてくれます。

京都御苑東 梨木神社


梨木神社

そこから歩いてすぐの「京都御苑」。
八坂神社に隣接する円山公園や比べると、御所の桜は静寂で厳かな佇まい。広い敷地に点在する桜を、のんびり歩きながら眺める。春の京都御苑には、地元の人が犬を連れて散歩していたり、お弁当を広げていたりして、ここは「観光地」である前に、京都の人たちの「大切な公園」なのだなと実感します。その日常感が心地いい。

京都御苑

Roastery DAUGHTER & Gallery SON|Wife&Husbandが描く美学


 京都御苑から京都駅に向かおうとして、思い出したように向かったのは、「Roastery DAUGHTER & Gallery SON」。 大人気カフェ『Wife&Husband』のロースタリーです。

以前、立ち寄った時にはまだオープン前でした。素敵な外観に、いつか寄ってみたいと思っていました。帰りまで、まだ時間があったので寄ってみました。

古びたアンティークのような趣の外観から中へ入ってみると、
1階の焙煎所の香ばしい香り。そして2階へ上がると、そこにはアンティーク品が並び、壁面にはピカソの写真集。静謐で濃密な空間が広がっていました。 雑然としているようでいて、すべてが「あるべき場所」にある。彼らの美学に触れる時間は、この3泊4日で研ぎ澄まされた感性をさらに深めてくれるようでした。


京都のこういう場所は、いつも予想を超えてくる。
名残惜しさを感じながら、そろそろ京都駅へ向かう時間だ。

JR京都伊勢丹で探す、一期一会の「季節の味」

 いよいよ、京都駅。旅の始まりと同じ場所に戻ってきました。
旅の最後、サンダーバードに乗る前に必ず立ち寄る場所があります。
それは、ジェイアール京都ISETANのB1Fにある老舗名店の味セレクションコーナー。 京都には数多くのお漬物の名店がありますが、私のお目当ては「期間限定」の文字。その時期にしか出合えない旬の野菜を使ったお漬物をその時期にしか出店しない名店が宝探しのように見つけ、いくつか手に取ります。 「今の京都」を自宅に持ち帰る。それは、旅の余韻を日常に繋ぐ、私にとって大切なしるしと家族へのお裾分けでもあります。

旅のフィナーレ。駅弁の「鯖寿司」に想いを乗せて

 伊勢丹を後にし、新幹線改札のすぐそばにある賑やかなお土産エリアへ。 ここで選ぶのは、3泊4日の旅を締めくくる最後のご馳走です。 今回、私の目が釘付けになったのは、この端正な姿で並ぶ「さば寿司だし巻弁当」。

艶やかな鯖の身がのったお寿司と、お出汁をたっぷり含んだ黄金色のだし巻き卵。 この「京都の正解」とも言える組み合わせと大好きな柿の葉寿司を手に取ったら、そろそろホームへ向かう時間。

「旅の〆さば、〆めし」


私がいつも帰路につくのは、乗り継ぎに北陸へと向かう「特急サンダーバード」。 京都駅の長い長い0番線ホームに滑り込んできた列車に乗り込み、座席でゆっくりと包みを解く瞬間――これこそが、私の旅の本当の終幕です。

口に運ぶたび、今朝の小川珈琲の香りや、国際会館の凛とした空気、蓮華寺の静寂、そして鈍考で過ごした贅沢な孤独が、鮮やかな記憶となって蘇ります。

予定を詰め込みすぎず、あえて残した「余白」があったからこそ、その隙間に、これほどまでに豊かな物語が入り込んできた。新幹線の加速を感じながら、そんな風に思いました。

さらば古都。また、次の季節に恋をしに来ます。

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出町柳・京都御所エリアへのアクセスに便利な京都の宿は、

立ち寄った場所

  • 出町柳商店街
    左京区・叡電・京阪の出町柳駅そば。地元色豊かな商店街。
  • 梨木神社
    上京区・京都御所の東隣。京都三名水「染井の水」が今も湧く。
  • 京都御苑
    上京区・通年無料で入園できる広大な御所の森と庭。桜・紅葉の季節がおすすめ。
  • Roastery DAUGHTER & Gallery SON(by Wife&Husband)
    上京区・コーヒー豆とアンティーク品の2フロア構成。独特の世界観が魅力。

「保存版」春の京都3泊4日・旅の記録(全23回)

「京都に恋する。」をテーマに、3泊4日の全記録です。

■ 1日目:歴史の深淵と、モダンが交差する幕開け

■ 2日目:静寂の庭と、路地裏に息づく「意匠」を巡る日

■ 3日目:光を追いかけて。桜の回廊とアートへの没入

■ 4日目(最終日):日常へ、そして帰路へ

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