冬の京都旅 ⑨|妙心寺の静けさと、門前で飲んだ甘酒のこと

冬の京都旅

仁和寺をあとにして、妙心寺へ向かう。

記憶の片隅に残っていた、真田家ゆかりの塔頭・大法院。
いつか見てみたいと思っていた場所だった。

表の参道ではなく、仁和寺側の裏の狭い路地から境内へと入ると人の気配はほとんどなく、
足音だけが静かに響く。

大法院の前まで来ると、この日は拝観期間ではなく門は閉ざされていた。
真田幸村の兄・信之の菩提寺として創建された、妙心寺の塔頭・大法院。
露地庭園が美しく、紅葉の名所としても知られているとどこかで見かけた。
普段は非公開で、限られた時期にだけ公開される場所だという。

そう思うと、なおさら中を見てみたくなる。
それでも、その場に立ってみると、
不思議とそれだけで十分な気もしてくる。

妙心寺の境内は驚くほど静かで、
本当に人の気配がほとんどない。

観光地でありながら、
こんなにも“何も起こらない時間”が流れていることに、少し驚く。
目的を果たせなかったはずなのに、
どこか満たされたような感覚のまま、歩き続けて
そのまま境内を抜け、表門へと出た。

門の外に出ると、すぐ目の前に小さな酒屋。
店先には、テイクアウト用の黒板が立てられていて、
脇には小さな窓もある。

冬の午後、日がほんの少し傾きはじめて、
空気がすっと冷たくなる時間。

その黒板に書かれた「甘酒」の文字が、唐突に目に入る。
ほとんど迷わず、吸い寄せられるようにそれを頼んだ。

値段を見ると、思わず二度見するくらいに、控えめな価格。
こういうところに、もともとの京都らしさが残っている気がする。
観光地らしい価格のお店もあるけど、
ここには日々の暮らしに寄り添うような、変わらない空気がある。
それを当たり前のように守り続けている、そんな職人気質のようなものも感じる。

ひと口飲むと、
やわらかな甘さが、冷えた体にじんわりと広がっていく。

思わず、ほっと息がこぼれた。
さっきまでの静けさがそのまま体の中に残っているような、
そんな感覚。

やっぱり京都だな、と思う。

甘酒に少し元気をもらいながら、駅へと向かう。
このあと、もう一軒。
気になっていた小さな店へ向かうつもりだ。


追伸
「あめゆ」も、気になる。


もう一軒。気になっていた店の後は、
清水五条の夜へ続きます

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