展覧会の余韻を抱えたまま、本殿へと向かう。
二の丸御殿台所・御清所を見たのだから、その本殿を見ておこうと。
靴を脱ぎ、本殿へと上がると、
さっきまでの静けさとは違い、
そこには人の長い列があった。

修学旅行のように、
大勢の外国人観光客の列に混じりながら、
長い列に沿って、ぞろぞろと進んでいく。
柳の間から、
三の間、二の間、大広間へ。
磨かれた床。
少し軋む音。
ゆっくりと廊下を進む。
歴史的な場を再現した侍の姿をした人形たちが鎮座する。
それは人の気配がありながらも、
どこか整えられた空気が流れている。
前を歩く外国人の家族の会話が、ふと耳に入る。
どうやら専属のガイドがついているようで、
将軍、徳川家や、大政奉還の場面ついての説明をしている。
時にユーモアを交えるガイドの話を
笑みを浮かべて相槌を打つ家族に、
つい聞き耳を立ててしまう。
遠い過去の昔話を楽しげに話すその様子は、
生き生きとして、
のろのろと進む列の退屈さを紛らわせて、
その場の空気をやわらかくしていた。

特質すべきなのは、そのガイドさん。
“さん”と呼びたくなるような人だった。
孫がいておじいちゃんと呼ばれるくらいの年頃の男性だったこと。
けれど、英語はもちろんのこと、
その語り口も、話す表情も、立ち居振る舞いも、
とても”はつらつ”としている。
長い歴史を伝える場所で、
それを伝える人が、こんなにも軽やかに場を動かしている。
その光景が、なぜかとても印象に残った。
観光都市、京都。
その軽やかな底力。
多くの人が訪れる場所でありながら、
ただ消費されるだけではないものが、
確かにあるように思えた。
歴史を伝えること。
それを、今の言葉で、今の人に届けること。
その積み重ねが、
この場所の空気をつくっているのかもしれない。

気づけば、
最初に感じていた人の多さも、気にならなくなっていた。
流れの中に身を置きながら、
ただその時間を過ごしている。
旅は、偶然の出会いと、そこで生まれる気持ちでできている。
予定にはなかった庭園を、
一周してみようと思い、歩き出す。
二条城は、満喫した。
そんな言葉で片づけるには、少し惜しい時間だった。





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