東福寺の紅葉といえば、通天橋。秋の朝、東福寺駅から歩きだすと、ほとんどの人が同じ方向へ流れていきます。その流れから一本外れた静かな道の先に、塔頭(たっちゅう)の光明院があります。

この旅は光明院からはじまって、東山の高台を越え、京都一周トレイルの急な坂を下り、泉涌寺の雲龍院、そして七条の智積院まで歩いた、秋の一日の記録です。
2026年の秋、東福寺の紅葉の特別期間は11月14日から12月6日まで。通天橋は朝8時半に開きます。光明院はそれより早く、朝7時ごろから。人の流れが通天橋へ向かう前に、先に光明院の庭へ入っておくと、静かな時間を持てます。各寺の拝観時間と料金は、記事の最後にまとめました。
ここからは、数年前の11月28日、七日間の京都旅の一日目の記録です。紅葉の見頃を、ぎりぎり追いかけた日でした。
※本記事にはプロモーションが含まれます。
東福寺の塔頭、光明院から旅をはじめる
人生の節目節目に訪れていた京都ですが、数年前から、京都を舞台に描いたNHK BSプレミアムのドラマ『京都人の密かな愉しみ 』がきっかけで、さらに近しい町になりました。七日間の旅のはじまりは、東福寺の塔頭、光明院です。

東福寺へ向かう人たちとは別の、静かな道を歩いていくと、門に「光明院」の木札。門をくぐると、空気が変わります。
光明院の創建は室町時代。方丈の前に広がるのは、昭和の作庭家・重森三玲の初期の作といわれる「波心庭(はしんてい)」です。大海に見立てた白砂が曲線を描き、三か所に三尊石が組まれ、たくさんの石が斜めに並んでいます。苔の緑と砂の白、その向こうに燃えるような紅葉。禅の庭を前にすると、背すじがすっと伸び、素直でありたいと思わせられる気がします。

苔の美しさから「虹の苔寺」とも呼ばれるお寺。春は新緑、秋は紅葉。季節ごとに、庭がまるで違う顔を見せるお寺です。

障子の丸窓からのぞく庭も、ひとつの絵のよう。この日は寺のそこかしこに、世界の街を撮った写真が飾られていました。写真展が開かれていたのです。古い禅寺が新しいものも取り込んでいく、これもまた京都らしさだと思います。京都の人は新しいものがとても好き。古い都に住んでいるからこそのことなのかと想像できますね。
一通り、庭園と建物を堪能してから、方丈に上がり、波心庭を前にお抹茶とお干菓子をいただきました。苔と石組み、その向こうの紅葉を眺めながら、旅のはじまりにひと息。


そして、ここは私にとって、ドラマの中で先に出会っていた場所でもあります。NHK BSプレミアムのドラマ『京都人の密かな愉しみ Blue 修業中』の「燃える秋」。その冒頭に映る禅寺が、この光明院です。主人公の一人、幸太郎が紅葉について語る場面で、紅葉したもみじを食べるシーンがとても印象的で好きです。その後、それが原因で?お腹を壊すという、コメディな部分も魅力です。このドラマのように紅葉の時期に間に合うかなと思っていたところ、ぎりぎり滑り込みセーフでした。

光明院へは、京阪「鳥羽街道」駅から歩いて約5分、JR・京阪「東福寺」駅から約10分です。拝観は朝7時ごろから日没ごろまで、拝観料は500円。お休みはありません。
ドラマ『京都人の密かな愉しみ』と、ロケ地を歩いた記録はこちら👇

東山の高台から、京都トレイルの急な坂を下りて
光明院をあとにして、東山の方へ登っていきます。人の気配のない、高台の静かな住宅街を抜けていきました。

その先は、京都一周トレイルの急な下り坂。この道で見かけた標識が、私が京都トレイルというものを知った最初でした。「なんだろう?」と、あとで調べたのです。
坂を下りて住宅街に出ると、脇道の奥に鳥居が見えました。気になる存在感に引き寄せられるように鳥居をくぐると、空気が一変します。

たくさんの鳥居と、たくさんのお稲荷さん。滝の落ちる音と、美しい紅葉の木々。五社之瀧神社(ごしゃのたきじんじゃ)です。

お供えのろうそくを納めていると、いつのまにか足もとに焦茶色のトイプードル。静かにこちらを見つめて、いつのまにか帰っていきました。あとで調べてみると、ここは伏見稲荷の滝行の場なのだそうです。霊感が強いわけではない私でも感じるほど、不思議な空気の場所でした。

住宅街の中に、こんな由緒ある神社やお寺がさりげなくあるのが京都です。数年後、私は伏見稲荷から京都トレイルを歩いて、もう一度この神社にたどり着きました。その日のことを書いた記事はこちら👇

京都トレイルそのものについて知りたい方は、こちらの記事を👇

泉涌寺の別院、雲龍院へ
この日のいちばんの目当ては、泉涌寺の山内のいちばん奥にある、別院の雲龍院でした。

会いに来たのは、お寺のお台所にいらっしゃる「走り大黒天」さん(※残念ながら、撮影はできません)。ふつうの大黒さんとは少し立ち姿が違っていて、いまにも一歩踏みだして走りだそうとしている姿です。水晶の瞳とその姿から、力が伝わってくるよう。この大黒天を知ったきっかけも、NHK BSプレミアムのドラマ『京都人の密かな愉しみ』の「わたしの大黒さん」でした。今年、44歳という若さで亡くなった中村ゆりさんが、一柳美里役を演じてらっしゃいました。大好きな女優さんに、ぴったりの役だったのではないかなと思っています。そのせいか、なんとなく親しみやすい大黒さんでした。おみくじを引いたら、大吉。このドラマ、ぜひ観ていただきたい作品の一つです。

座敷の向こうには、紅葉の庭。障子に並んだ小さな窓からも、庭の色が見えます。

縁側の前には「瞑想石」。この石に、左右の足の土踏まずをのせて、呼吸をしながら宇宙を感じる瞑想です。美しい紅葉の庭を前にして、気持ちのいい瞑想でした。土踏まずが、気持ちいいのです。


雲龍院は、南北朝時代の後光厳天皇の勅願で建てられたお寺で、西国薬師霊場の第四十番札所です。拝観は9時から17時(受付は16時30分まで)、拝観料は400円で、泉涌寺とは別になります。毎週水曜日はお休みですが、11月だけは水曜日も拝観できます。この日は時間が足りず、雲龍院を堪能した後は本坊の泉涌寺には寄らずに、次のお寺へ向かいました。泉涌寺は次回の旅でぜひ。
雲龍院から智積院へ、窓辺の猫
次のお寺へ向かう道すがら。西日がぽかぽかと当たるガラス越しに、お昼寝の真っ最中の猫がいました。私の視線などものともせず、ぐっすりにゃー。

窓には「ガラスを叩かないでやってくださいな」と、飼い主さんの思いやりの貼り紙。もちろんです。歩く旅には、猫との出会いがつきものです。
泉涌寺道の交差点で東大路通に出て、北へ。七条の智積院をめざします。

智積院、長谷川等伯の楓図と名勝の庭
一日目の最後は、真言宗智山派の総本山、智積院です。京都に暮らしていた知人が「ここはぜひ」とすすめてくれたお寺でした。

お目当ては、長谷川等伯と息子の久蔵が描いた「楓図」「桜図」。どちらも国宝で、宝物館で見ることができます(撮影はできません)。目の前にすると、その大きさと色の力に圧倒されます。

等伯ゆかりのお寺といえば、西陣の本法寺もそのひとつ。ドラマのロケ地を歩いた日に訪ねています。

名勝と呼ばれる庭は、池のまわりに石を組んだ池泉観賞式の庭。紅葉の名残りが、水面に映っていました。雅で、正統派の京都。圧倒されました。


襖には、蓮と鳥。後藤順一さんが1995年に描いた「浄」という襖絵です。同じ後藤順一さんの「百雀図」も並んでいました。

智積院の拝観は9時から16時30分(受付は16時まで)。境内は無料で、庭園と宝物館はそれぞれ500円です。市バス「東山七条」から歩いて約5分。公式サイトは現在メンテナンス中なので、最新の情報は電話(075-541-5361)で確かめると確実です。
一日目の夜は、地元の居酒屋で
寺院の拝観は、だいたい夕方の4時から5時で終わります。宿にチェックインして、夕食は地元の気軽なチェーン店居酒屋へ。九条ねぎたっぷりの一皿。リーズナブルなお店でも、京都はレベルが高い町です。よく歩いた一日、早めに休みました。
翌日は、早朝の鴨川を歩いて下鴨神社へ。そこから大徳寺の塔頭をめぐりました。

東福寺から智積院まで、秋に歩くときのメモ
- 朝は光明院から。光明院は朝7時ごろから拝観できます。秋期の東福寺・通天橋は8時半の開門です。
- 拝観料は寺ごとです。光明院500円、雲龍院400円、智積院は庭園と宝物館が500円ずつ。小銭を多めに。
- 雲龍院は水曜がお休み。ただし11月は水曜も拝観できます。
- トレイルの区間は急な坂です。歩きやすい靴で。坂を避けるなら、東大路通を歩いてもつながります。
- 方丈や座敷は足もとが冷えます。11月末なら、靴下は厚めのものを。
- 智積院の宝物館は撮影できません。目に焼きつけるつもりで。
2026年秋 東福寺のまわりの拝観案内
| お寺 | 拝観時間 | 拝観料 (大人) | メモ |
|---|---|---|---|
| 光明院 | 7:00ごろ〜日没ごろ | 500円 | 無休 |
| 東福寺 通天橋・開山堂 | 8:30〜16:00 (11/14〜12/6) | 1,000円 (同期間) | 秋期は共通券なし |
| 東福寺 本坊庭園 | 9:00〜16:00 | 1,000円 (11/14〜12/6) | 通常期は11/1から600円 |
| 雲龍院 | 9:00〜17:00 (受付は16:30まで) | 400円 | 水曜休み(11月は水曜も拝観可) |
| 智積院 | 9:00〜16:30 (受付は16:00まで) | 庭園500円 宝物館500円 | 境内は無料 |
※2026年10月14日時点。受付終了の時刻は寺ごとに違います。雲龍院は10月24日(土)も拝観休止です。出かける前に、各寺のお知らせをお確かめください(参考:東福寺 拝観案内/京都観光Navi 光明院/雲龍院 参拝ご案内/そうだ 京都、行こう。智積院)
歩いた順番は、光明院 → 東山の高台 → 京都一周トレイルの坂 → 五社之瀧神社 → 雲龍院 → 泉涌寺道 → 智積院。紅葉の京都で混雑を外した歩き方として参考にしていただけたら、うれしいです。
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前の晩に京都に入っておくと、朝いちばんの光明院から歩きはじめられます。
🍁 2026年秋・京都の紅葉の記事
- 上賀茂神社から歩いて、源光庵の悟りの窓へ(鷹峯・常照寺の紅葉)
- 大徳寺の塔頭をめぐる半日(黄梅院の紅葉と大仙院の縁側)
- 出町ふたばの栗餅を持って、京都御苑の紅葉へ
- 法然院の紅葉と、谷崎潤一郎が眠る墓へ(哲学の道の秋)
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