※本記事にはプロモーションが含まれます。
祇園祭の後祭に合わせて、二泊三日の京都ひとり旅へ出かけました。
宵山も、巡行も見ました。けれどこの記事に書くのは、そのあいだの時間のほうです。ナビを外れて入った脇道、寝ころんで見上げた天井の龍、豆皿が九つ並んだ昼ごはん、二晩続けて通ったビストロ。
山鉾を見ていない時間に、何があったのか。祭のあいだの、祭ではない三日間の記録です。
祭そのもの——宵々山、宵山、巡行の話は、こちらにまとめています。

一日目|京都駅の八条口で、本を一冊
京都に着いたのは、お昼過ぎでした。七月の、いちばん日差しの強くなっていく時間です。宿のチェックインは午後3時以降。それまでの数時間をどこで過ごすかは、行きのサンダーバードの中で決めました。
京都駅の八条東口へ降りて、ロッカーに荷物を預けたら、南区東九条エリアへのバスに乗ります。二駅目で降ります。チームラボ京都が最寄りのバス停です。
そのすぐ近くに「鴨葱喫茶」
そのすぐ近くに「鴨葱喫茶」があります。隣接する「鴨葱書店」に続く新店で、築100年の町家をリノベーションしたモダンな空間。こだわりのオリジナルカレー、コーヒーは京都・五条の[ブルームコーヒー]のものと、店名にも、お店のメニューにも、書店にも心惹かれ、初日のお昼ごはんはここ!と決めてお邪魔しました。
店内に入ると、シンプルでモダンな作り、店内の8割の席が埋まっていて、ほとんどが外国の方でした。
本来なら2人前以上の量をご厚意で一人前にしていただいたサラダボール、鴨葱キーマカレー、それにアイスアメリカーノを注文。冷房の効いた店内。サラダボールは薄切りのお肉に新鮮なサラダが贅沢な味。鴨葱キーマカレーには、名前の通りネギと一緒に白胡麻がまぶされていて、味わいのあるスパイシーなカレーを堪能。食後のアイスアメリカーノで、体の熱を鎮めます。
お隣の鴨葱書店へ
席が満席になる頃に、お暇して、お隣の鴨葱書店へ。ここへくる目的の一つです。棚の本の並び方がとても魅力的で、一冊ずつが目に入ってきます。そして面白かったのが、おみくじ。くじで引いた数字をもとに、短歌が1首載ったステッカーでおみくじをもらえるという、楽しい仕掛け。
この日購入したのは、茨木のり子の詩集でした。生誕100年を記念して出版された、谷川俊太郎さんが選定した詩の一冊です。想定は前回の旅でお邪魔したミナペルホネンの皆川明さんのもの。その旅では、茨木のり子さんの展示にも行っています。その旅では、茨木のり子さんの展示にも行っています。この装丁は、生誕100年のフェアのあいだ、協力書店に並んだものだそうです。旅先の書店で、たまたまその期間に行き合わせたことになります。
点と点は、繋がるものですね。
本を買うと荷物が重くなるとわかっていて、それでも持って帰りたくなる本が時々あります。お店の女の子となぜか野良猫の話でおしゃべりをして、店を後にしました。
📖 茨木のり子 生誕100年の詩集(PR)
谷川俊太郎さんが選んだ一冊。写真の装丁はフェア限定ですが、中身は同じものが岩波文庫で読めます。
チームラボ バイオヴォルテックスへ
そのあとは、せっかくここまで来たならと、デジタルアートを鑑賞しに、目と鼻の先のチームラボ バイオヴォルテックスへ。数時間楽しめるという巨大なデジタル空間は、私には1時間くらいで十分な時間でした。現代アートの街・東九条エリア
ここ数年、東九条エリアは、デジタルアートや小劇場、ギャラリーが新設されて、現代アートの発信地となってきているとのこと。今回は劇場やギャラリーはお休みだったので、いつかまた来てみたい。▶︎THEATRE E9 KYOTO
2019年に元倉庫をリノベーションして誕生した、約90席の民間小劇場。京都の劇場文化を守り、演劇やダンス、音楽など多彩な現代舞台芸術を発信する先駆的な存在としてエリアを牽引。
▶︎gallery GARAGE(ガラージュ)
シャッターのみで扉がなく、街行く人が誰でも覗き込めるセミオープンスタイルのコマーシャルギャラリーです。敷居の低いアート空間として、街の風景に溶け込む。▶︎2026年冬に開業予定の、米国発の世界的体験型アートセンター。1階では世界的なアーティストによる大規模な没入型アートを定期的に展開し、2階には若手アーティストや伝統工芸を紹介するギャラリーが併設される予定。
京都駅に戻って、荷物をピックアップしてから、地下鉄で四条駅へ、5時に宿へチェックインして、少し休憩。夜は宵々山に出ました。山鉾のことは、祇園祭 後祭の記事に書いています。
三条新町のフレンチビストロで絶品ワインと牛サガリ
後祭散策のその帰り、三条新町でフレンチビストロを見つけました。Brasserie VAPEURS。今回は調べて行った店ではなくて、歩いていて目に入って、入ってみました。そして、そのお店、当たりでした。この夜と翌日も予約して2夜お邪魔することになりました。
初めてのお店へ入るときは、いつもドキドキワクワクです。
入り口のドアを開けると、正面にあるカウンター席に数人の方と、テーブル席に一組。カウンター席には一人でいらしてる女性もいて、お店の方もどうぞと気さくに対応していただいたので、カウンター席の隅に着席です。この夜は、まずビール。それから、仏産クレマン・ド・リムー、ラングドックのシャルドネ、スペインのテンプラニーリョと、グラスで一杯ずつ変えていきました。前菜に自家製ピクルス、メインは牛サガリのステークフリット。エシャロットとパセリのバターがのっています。
〆て、6,650円でした。グラスで頼めるので、一人でも三杯、違うものが飲めます。
グラスワインは、店の奥のワインセラーから。部屋がまるごとセラー。どれもおいしいワインでした。メインの牛サガリも絶品でした。メインを注文する時、「京都産 七谷鴨フィレのロースト」と最後まで迷いました。鴨の胸肉をゆっくり火入れして、マディラソースでいただく一皿。帰り際、翌日の予約をして、店を出ました。事前に店を予約して旅に出るのもいいですが、こんな風に見つけたお店に2晩通うのも、自由な旅の楽しみです。ホテルへの帰り道は、山鉾の提灯が夜の街に浮かぶ夏の夜の風景でした。
この東九条の半日だけを目当てに行くなら、営業時間や、その日かかった料金をまとめた記事があります。
→ チームラボ京都の周辺で過ごす半日|鴨葱喫茶と鴨葱書店、京都駅から歩く東九条
二日目|ナビを外れた道で
暑くなる前の早朝から下鴨神社へ。
清々しい糺の森と、みたらし祭の足つけ神事の話は、↓こちらの記事をぜひ。
▶ みたらし祭の朝|糺の森を歩いて、冷たい水へみたらし祭の後は、出町柳駅へ。
京阪で一本、祇園四条に降りると、向かうのは、建仁寺の塔頭・西来院です。
寺院の天井に龍の絵が描かれているのは、いわば当たり前かもしれません。でも、その龍を寝そべって眺められるお寺は、そう多くありません。それを体感したくて、東山へ向かいました。
Google マップは、大きめの通りを行く道順を出しました。けれど、その少し手前に、細い道が伸びています。いつもながら、感覚のほうを選んで、そちらへ入りました。鴨川の東側、宮川筋。先斗町の向かい側にあたる花街です。四条通の人の多さが、一本入っただけで消えました。誰も歩いていない、まっすぐな通り。両側には花街らしいお店が並んで、夜を前に静まり返っています。
2254 HOTEL & LOUNGE|住所が、そのまま店名
その道の先に、瓦屋根と木格子の建物がありました。柱にオレンジの数字で2254、足元の黒板にはCOFFEE、BEER、TAKEAWAY。暑い日の旅にはこまめな休憩をと、中へ入ってみました。レンガを敷きつめた床に、木のカウンター。天井が抜けていて、背の高い観葉植物が入っています。お店の方に伺うと、一棟貸しのホテルで、一階がラウンジになっているとのこと。2254 HOTEL & LOUNGE。東山区宮川筋二丁目254、住所がそのまま名前です。 外観とともに店内もモダンで雰囲気のある作り。お店の女性にお話を聞くと、一棟貸しのホテルであり、ラウンジでもある2254HOTEL & LOUNGE。
涼しい店内の中庭の見える席で、アイスコーヒーを一杯。地元の方がふらりと立ち寄られるそうですが、このときは、私ひとり。贅沢な時間でした。
束の間の休憩時間。知る人ぞ知るラウンジには、メニューにはホットコーヒーなら市川屋ブレンドや馬町ブレンド、台湾茶やスムージーも。スウィーツやベーグルサンド、たまごサンドも。次回は、ブレックファーストかランチをと、お店の方とお話して店を後にします。帰りぎわ、壁に目がとまりました。白い団扇が十六枚、四列に並んでいます。赤い字で、芸妓さん舞妓さんの名前。上に小さく屋号、下に大きくその方の名前が入っています。いちばん下の列には、「2254 宮川町」と染めた一枚も混じっていました。
京都の花街では、夏になると、芸妓さん舞妓さんが自分の名前を入れた団扇を、馴染みのお店へ配る習わしがあるそうです。京丸うちわと呼ばれるものです。この壁に並んでいるということは、この店が、この町のなかにあるということでした。
ガラス戸を開けて、また、誰も歩いていない通りへ。
このお店の公式サイトは、こちら→2254 Hotel&Lounge1Fラウンジスペースにあるカフェは宿泊のお客様に限らず、地域の方にもご利用いただけるそう。ラウンジスペースのみペット同伴でのご利用が可能。お散歩の休憩にも。
2254 HOTEL & LOUNGE
京都市東山区宮川筋二丁目254
10:00〜18:00/月曜定休
一棟貸しホテルの一階ラウンジ。宿泊しなくても利用できます。ラウンジのみペット同伴可▶営業時間 10:00-18:00 月曜定休
宮川町通を南へ|素顔の舞妓さんとすれ違う

宮川町通をさらに南へ。しばらく歩いていると、向こうから、舞妓さんが二人歩いてきました。楽しそうに談笑して横を通り過ぎて行きます。通り過ぎたあと、思わず振り返りました。石畳の道を、日傘がふたつ、遠ざかっていきます。京都の路地、舞妓さんたちが毎日通っている道は、ナビのとおりに歩いていたら通らなかった道。思いがけず、素顔の舞妓さんとすれ違えたのは小さな幸運です。

この通りの先には、「宮川町歌舞練場 三ツ輪座」(みつわざ)です。宮川町の紋「三つ輪」から採られた名前で、2025年に新装開場したばかり。すれ違った舞妓さんたちはお稽古の帰りということということでしょう。この通りは、風情もあり、素敵な店もあって、おすすめの通りです。


京都ゑびす神社|えべっさんと、道開きの神さま

三ツ輪座から新道通りへ出て、京都ゑびす神社の境内へ。
日本三大えびすと、「えべっさん」の名で親しまれる神社だそう。
京都は重要的な神社仏閣があちらこちらに点在しています。だから、ポケットにはいつも、お賽銭用の小銭を入れています。
本殿にお参りして、境内を見回すと、猿田彦神社がありました。猿田彦珈琲を思い出し、調べてみると、猿田彦大神は道開きの神さま。物事をよい方向へ導いてくださる神さまで、あのお店の名前も、ここから名付けられたものだそうです。猿田彦大神にも手を合わせます。

西来院|天井の白龍を、寝ころんで見上げる

新道通りから、建仁寺境内の法堂側に入って、目的地、西来院へ。
白い幕の掛かった門をくぐります。幕には桐の紋。青もみじが門の上まで枝を伸ばしていました。
建仁寺の塔頭、西来院。
鎌倉時代に宋から渡ってきた蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が開いたお寺です。
長いあいだ非公開でしたが、二〇二四年の春から拝観できるようになりました。三つの庭も、天井の龍も、そのときに新しく生まれたものです。


拝観は10時から17時まで。大人500円、中高生300円、小学生以下は無料です。玄関で靴を脱いで、方丈(本堂)の板の間へ上がると目に入るのが、

達磨の絵が一枚。横に「不識」の二文字。「識らず」と読みます。
中国の皇帝に「おまえは何者だ」と問われた達磨大師が、そう答えたと伝わっています。
自分が何者かを、名乗らない。
名乗った瞬間に、そこに「自分」が立ちます。禅は、その自分を立てないところから始まる。だから、識らず。知らないのではなく、決めない。
禅の教えが、心に沁み痛みます。
禅の喫茶去と、蘭の中庭
玄関を上がると、まっすぐ伸びる廊下。
右手には、抹茶をいただける「禅の喫茶去」。目の前に禅の庭が広がっていて、それを眺めながら冷たい抹茶をいただけます。この日はほぼ満席。
その向かい、廊下の左手、方丈(本堂)の西側に位置する西縁と中庭には白砂が敷き詰められ、その白砂から、細い竹が数本立ち上がっています。亀甲竹(きっこうちく)という、節が亀の甲羅のような形になる珍しい竹だそうです。
足元に、丸い石の器。水面に、紫の蘭が浮かべてありました。樂焼の家に生まれた彫刻家、樂雅臣(らく まさおみ)さんが納めたものです。
西来院は「蘭の寺」とも呼ばれます。開山の蘭渓道隆にちなんで、境内には蘭がたくさん植えられている。器に浮かぶこの花も、そのひとつでした。
とても涼しげな空間です。



白龍図を描いた人|写真家・画家・陳漫(チェン マン)
その先をまっすぐ進んで部屋に入ると、天井いっぱいに、2頭の白い龍。

天井いっぱい、およそ五十四畳分。これを描いたのは、中国のアーティスト、陳漫(チェン マン)さんです。
本業は写真家。世界で活躍してきた方が、墨で二頭の龍を描きました。二〇二八年、開山七百五十年の大遠忌に向けて奉納されたものです。広い畳の部屋に、仰向けに寝て、龍を眺めている人たち。
真上に、龍の顔。

墨の濃淡だけで描かれた龍が、雲を抜けて、見下ろしています。角の先から髭の一本まで、線が細かい。片側には黒々とした夜の雲、その向こうに満月。龍の目は、真上ではなく、少し斜めを見ています。
寝ころんだまま見上げた天井。写真の龍はすべて、視線はこの姿勢から撮っています。
寺院の天井に龍がいるのは、めずらしいことではありません。けれど、たいていは首を反らせて見上げるものです。寝ころんだまま、時間を気にせず眺められるお堂は、そう多くありません。
大迫力の龍を寝転んで堪能する。非日常の体験。
白砂と苔の庭
龍の部屋を囲う縁側。

目の前に、白砂の庭が広がる、枯山水庭園「峨眉乗雲(がびじょううん)」。
2028年の開山750年遠忌に向けて作られた庭のひとつです。作庭は中根庭園研究所、植栽はプラントハンターの西畠清順さん。箒目の入った白砂に、緑の苔が島のように浮かんで、その奥は青もみじと松。砂の上に、大きな石がひとつだけ据えられています。
磨かれた縁側の板に座って、真夏の昼です。庭は日を受けて白く光っているのに、この板の上は涼しい。





俳句涅槃図と、達磨と、登竜門
龍の間から続く畳の間、中庭の前に、涅槃図が掛かっていました。縦二メートル四十、横三メートル。題は「俳句涅槃図」、木村英輝さんの作です。

涅槃図は本来、亡くなるお釈迦さまを弟子や動物たちが囲んで嘆く、伝統的な仏画です。けれどこの一枚には、聖徳太子も、アインシュタインも、マリリン・モンローもいます。虎やゴリラや馬に混じって、古今東西の人たちがお釈迦さまを取り囲んでいる。金地のあちこちに、短冊が散らばっていました。黛まどかさんの俳句です。
その奥にあるのが屏風。青と黒の鯉が渦を巻いて、その中央に龍の顔があります。題は「登竜門」。木村英輝さんの作で、SOU SOU からの寄進です。

鯉が滝を登りきると龍になる、あの登竜門です。屏風のなかでは、鯉たちがまだ鯉のまま渦を巻いていて、その先に龍がいます。
外へ出ると、苔の庭に石畳がまっすぐ伸びていました。石灯籠がひとつ。もみじの若い葉が、ところどころ赤く色づきはじめています。七月の終わりです。
行きたかった場所に、行けました。

建仁寺塔頭 西来院
京都市東山区大和大路四条下ル小松町建仁寺境内)
拝観 10:00〜17:00
大人500円/中高生300円/小学生以下無料
天井画は撮影できます。抹茶をいただける「禅の喫茶去」あり
▶ 公式サイト https://www.instagram.com/seiraiin/
ごはんや村上|素麺と、豆皿が九つ
西来院を出ると、お昼ご飯の時間。
朝から歩きどおしで、外は酷暑。できたら胃に重くないものが食べたい。この近くでと探して、そう思って向かったのが、ごはんや村上です。

コンクリートの壁に、丸いロゴの看板がひとつ。白い麻の暖簾に「ごはんや 村上」。足元に鉢植えが三つ並んでいて、入り口前のメニュースタンドには、

いただいたのは、素麺と豆皿のセット、1980円。夏限定です。
お盆の左に、朱の椀。冷えた出汁に素麺が沈んでいます。薬味は、刻んだ青ねぎと、生姜。右側に、豆皿が九つ。
この日の九皿は、鯖の薬味ポン酢、鶏ごぼうのきんぴら、たらこと白滝の炒り煮、ハモと玉ねぎの煮もの、じゃがいもの干しエビ青のり和え、豆苗ともやしの胡麻びたし、万願寺唐辛子のじゃこ煮、だし巻き、ごま豆腐。
丁寧にバランスよくバラエティに富んでおいしい豆皿は、京都のおばんざい。素麺にのせても、そのまま食べてもいい。少しずつ、器も一枚ずつ違います。

コシのある冷たい素麺が喉を通っていくのが、気持ちよく、お惣菜が九種類あるので、飽きません。熱でぼんやりしていた頭が、食べ終わるころには元気になっていく感じです。
真夏の京都を歩く日に、この一膳はよく効きます。

この日のお品書きは、
- 素麺と豆皿のセット 1980円夏限定
- 豆皿定食 1980円(九種類のおばんざいに、ごはんと味噌汁)
- 一汁三菜定食 1650円(この日のメインは、鯖のかば焼き)
- デザートセット +330円(カステラと抹茶アイス)
ごはんのおかわりは一杯無料。豆皿の中身は、日によって変わります。
お揃いの帽子を被った素敵なご夫妻が迎えてくれます。
またぜひ再訪したいお店です。
次回は夜のおばんざいや豆皿定食をいただきに。

ごはんや村上
京都市東山区大和大路四条下ル小松町4丁目561-17
京阪「祇園四条駅」1番出口から徒歩9分
11:00〜15:00/18:00〜21:00
日曜・祝日定休(不定休あり)
Tel 090-1589-8505
ライカギャラリー京都|町家の二階で、写真を見る
西来院を出て、建仁寺の境内を北へ抜けます。塔頭の門がいくつも続いて、白壁の上に瓦。松がひとつ、大きく枝を広げていました。

境内を抜けると、花見小路です。石畳の両側に町家が並んで、観光の人が行き交っています。さっきまでの静けさとは、また違う京都。
その通り沿いに、ライカ京都があります。

町家の軒に、白い麻の暖簾。隅に赤い丸のロゴが染めてあります。その隣に、祇園祭の駒形提灯。柱には「御神酒 ライカ」と書かれた奉納の貼り紙が下がっていました。
ドイツのカメラの店が、町内の一員として、お祭りに御神酒を納めている。祭は山鉾の上だけのものではないのだと、こういうところで気づかされます。

暖簾をくぐると、一階はカメラの並ぶ店内。壁に、モノクロの写真が一枚かかっていました。ルネ・ブリが1961年の京都で撮ったものです。向かい合った僧侶が、道の上で最敬礼をしている。その時代の京都の空気が、そのまま写っていました。
ギャラリーは二階です。黒い階段が、町家の吹き抜けをまっすぐ上がっていきます。

上がりきると、太い梁がむき出しの天井。白い壁に、写真が並んでいました。プール、遊園地、建物の階段、三つ編みの少女の後ろ姿。どれも色が淡くて、光がやわらかい。 少しくすんだパステルカラーのような色合い。ポルトガル出身の写真家の写真は、なんだかノスタルジックな世界へ連れていってくれました。
「テレサ・フレイタスさんの『Colour Matter(s)』という展示でした。


中央の大きな木のテーブルには、この展示と次回の展示の案内が並べてありました。はがきより大きい、一枚ものの紙。色のきれいな写真が刷ってあります。次の展示の案内に書かれていた言葉が心に残って、一枚持ち帰りました。
帰り際、ライカの雑誌を購入して、お店の方とカメラの話をしました。ライカのカメラを最初に購入するとしたら、どんなのがありますかと聞いてみました。すると、どんな写真を撮りたいですかと逆に質問され、旅先の写真を撮りたいと話すと、ビギナーにおすすめのカメラもあるとのことでした。ビギナーとはいえ、そこはライカ、なかなか手が出ませんが、いつか手にしてみたい。メール会員に登録して、店を後に。

ひとり旅だからこそ、こんな話ができるかもと、思います。もし、連れがいたら、写真を見て、そのまま店を後にしていたかもしれませんね。ひとり旅は、静かに世界を広げます。ライカのカメラを買おうなんて、想像もしなかった。新しく楽しみが増えていきます。
ギャラリー展示は数か月ごとに替わります。この記事を書いている今は、嶌村吉祥丸さんの「what matters」展。2026年10月1日まで開かれる予定です。ただし9月1日から11日までは休廊とのことなので、その時期に行かれる方はご注意を。入場無料・営業は11時から19時まで、月曜定休。ギャラリーは二階です。
その嶌村吉祥丸さんの展示の案内には、こう書かれていました。
「なんでもない、ありのままの日常の隙間に、何か大切なことがあるのではないでしょうか。」
(嶌村吉祥丸写真展「what matters」/ライカギャラリー京都の案内文より)
胸に響く言葉です。


ライカギャラリー京都
京都市東山区祇園町南側570-120 ライカ京都店2F
11:00〜19:00/月曜定休/入場無料
Tel 075-532-0320

ZEN CAFE|鍵善良房の、静かな一室

花見小路から四条通までの路地へ。
次に向かったのは、ZEN CAFEです。
葛切りで知られる祇園の菓子屋、鍵善良房のカフェ。白い壁に小さくロゴがあるだけで、看板らしい看板はありません。以前から向かいの窓の外に、近くの白hakuや、ZENBI(ゼンビ)、鍵善良房が開いた美術館、カフェの2Fの「昂 KYOTO」(こう・きょうと)にはよくお邪魔していましたが、こちらのカフェはいつも混んでいたので、気になっていたものの初めての来訪です。

こちらの記事もどうぞ。

静かな路地からさらに静かな空間。北欧の椅子と、低い木のテーブル。壁のくぼみに本が並んでいます。鍵善の菓子の本、苔の庭の写真集、ノグチ、ウォーホル、ホックニー。菓子屋のカフェというより、誰かの書斎に通されたような店内の一角です。

どこを切り取っても素敵な空間。七月の終わりです。青いイガがついたままの栗の枝が活けてあって、私がちょうどお邪魔した時は、お花屋さんが、店内のお花を活けていました。 この日いただいたのは、桃のフルーツサンドと、和紅茶。

耳を落とした白いパンに、生クリームと桃。青い波紋を描いた四角い皿に、六切れが並ぶ。和紅茶は白磁のポットで、緑の小皿に鍵善良房の小さな砂糖菓子がふたつ添えられていました。柔らかなパンに程よい甘さのクリームと上質の桃が口の中いっぱいに広がります。
涼しい店内での、至福の甘い時間。
メニューは、上生菓子、季節のお菓子とくずもち、フルーツサンド。お飲み物は煎茶・ほうじ茶・珈琲・和紅茶が各900円、カフェオレ1000円。ビールも。午後のおやつに、腰を落ち着ける場所としても最高でした。





ZEN CAFE
京都市東山区祇園町南側570-210
11:00〜18:00(L.O. 17:30)/月曜定休(祝日の場合は翌平日)
Tel 075-533-8686
上生菓子1000円、季節のお菓子・くずもち各1200円、フルーツサンド1500円。煎茶・ほうじ茶・珈琲・紅茶各900円。Free Wi-Fiあり

二度目のVAPEURS|今夜は鴨
祇園から、散策をしながら、いったん宿へ戻って、涼みました。三時半から予約時間まで、冷房の効いた部屋で休む。真夏の京都を歩くなら、これは必要な時間だと思います。
18時、予約していたのは Brasserie VAPEURS。昨夜、偶然入ったあの店です。

またあの店の路地を入っていくと、黒板と、フランスの国旗。看板に depuis 1992 とあります。三条新町で三十年以上。木戸の脇に、祇園祭のちまきが掛かっていました。

この夜は、仏産クレマンドリムーのスパークリングワインから。合わせたのは、ノルウェー産サーモンの冷製コンフィ。マリネした人参の千切りの上に、しっとり火の入った分厚いサーモン。口に入れると、ホロリとほどけて、にんじんの酸味とまろやかなサーモンはおかわりしたくなるほど、美味でした。


ああ、本当に胃袋がもう一つ欲しい(笑)
次はニュージーランドの白ワイン、ソーヴィニヨンブランと、うさぎと豚のリエット。赤い小さなココットに詰まっていて、バゲットに塗って食べます。

そしてメインは、昨夜迷っていただかなかった七谷鴨のフィレのロースト。京都産の鴨です。じゃがいもの上に、絶妙な火加減でローストされた薄紅色に火の入った胸肉が重なり、赤ワインの絶品ソースとともにいただく。
ワインはニュージーランドのピノ・ノワール。
これもまた至福の時間。

どの一皿も美味しかったので、名残惜しく最後にもう一杯だけ。オリーブの盛り合わせと、ブルゴーニュのアリゴテ。緑と紫のオリーブが、ガラスの小鉢に盛られてきました。冷えた白で、この日の締めです。

二晩続けて同じ店に来る。旅先ではあまりしないことですが、当たりを引いたら、迷うことなくリピートです。
この日のコースは、
- スパークリング × サーモンの冷製コンフィ
- ニュージーランドの白 × うさぎと豚のリエット
- ニュージーランドのピノ・ノワール × 七谷鴨のフィレのロースト
- ブルゴーニュのアリゴテ × オリーブ

帰り際に、お店の方に教えていただきました。今夜、南観音山で「あばれ観音」がある、と。 深夜、ご神体の観音さまを白い布で巻いて台座に縛りつけ、町内を走る行事だそうです。 まだ数時間あるので、少し夜の散歩の後に宿へ戻って、少し横になるつもりが、そのまま眠ってしまいました。
目が覚めたのは、外の騒ぎです。あばれ観音でした。慌てて飛び出して、南観音山へ。着いたときには、もう行ったあとでした。そのかわりに出会ったのが、北観音山の日和神楽です。翌日の晴れを祈って、囃子方が屋台を曳いて出ていく。深夜の新町通に、囃子の音だけが流れていました。
あばれ観音は、また来年に。
後祭の記事も書いてあるので、ぜひ。

三日目|祭の帰り道
朝の山鉾町を歩く
最終日。荷物をまとめて、チェックアウト。スーツケースは宿に預けて、身軽になって外へ出ます。

新町通は、巡行の朝です。水色の法被を着た男の人たちが、山鉾のほうへ歩いていきます。背中に「南」の一文字。着物姿の年配の女性が、下駄で通りを行く。祭の日の、この町の朝の顔でした。



私が見ていたのは、山鉾よりも、その両側の家々です。
鳩の暖簾が下がった町家。ここは八幡山の町内です。黒竹の札が掛かった、京都市指定有形文化財の川崎家住宅。
見覚えのある一枚の幕、白地いっぱいに、赤や金の鯉が渦を巻いている。添えられた木札には、祇園會、無病息災を願い、288匹の鯉たちが時空を舞う。誉田屋源兵衛、創業288年を慶ぶ。創業した年の数だけ、鯉を描く。誉田屋源兵衛は、実在する創業270年を超える西陣の老舗帯問屋「誉田屋源兵衛」であり、NHKプレミアムドラマ「京都人の密かな愉しみRouge 継承」の中に登場する、老舗呉服問屋「伊づ譽(いづ誉)」として登場しています。ドラマそのままの重厚な佇まいが、物語を思い出させます。

このあと、山鉾巡行を少しだけ見せていただきました。知り合いの家の高いところからで、暑さを避け、人混みに立たずに済んだぶん、楽をした形です。
この町を歩いた日のことは、こちらにも。

御金神社
巡行を横目に、逆へ。人の流れに逆らって西へ歩きます。
御金神社(みかねじんじゃ)。金色の鳥居に、稲穂の注連縄。名前のとおり、お金にまつわる神さまです。

柄杓が七つ並んだ手水で、手を清めてお参りしました。授与所は十時から。
京都小川生薬|100種類の生薬が入ったスープカレー

二条城の近く、京都小川生薬へ。
徳島の生薬メーカーが京都に出した店で、一つの建物に、泊まる(VILLA)・食べる(RESTAURANT)・飲む(CAFE)が揃っています。壁は版築。土を層に突き固めた、地層のような肌をしています。
黄緑のスツールに腰かけて、ブランチにしました。100種類の生薬が入った薬膳スープカレー。

スープは出汁をブレンドしたもので、素揚げの野菜、蓮根、ズッキーニ、パプリカ。ごはんは黒米の入った雑穀米で、上にごぼうチップスがのっています。
添えられた生薬チャツネが三つ。甘(キンモクセイ、シナモン、クローブ)、辛(生姜、ヒハツ、カルダモン、花椒)、酸(柚子、カモミール)。カレーに足して、味を変えながらいただきます。はちみつ入りヨーグルトと、砂糖も油も使っていないグラノーラも一緒に。
お茶は三種から。国産有機桑の葉茶、有機レモングラスルイボスティー、北海道産あずき茶。おかわりもできます。

外は炎天下、体は前日からの疲れが残っています。生薬のスープが、そこにゆっくり効いてくる感じがありました。
家族や友人のお土産に、お風呂のパックを交友。徳島県産有機すだちのお風呂660円、生姜のお風呂275円、ゆずのお風呂。それから徳島産のお茶を一袋。旅の疲れを、家に帰ってから湯船で流す。







然花抄院とGallery SUGATA|夏のさなかのガラス
室町通に、白い暖簾が長く連なる町家があります。然花抄院(ぜんかしょういん)。京菓子のお店です。

その奥に、Gallery SUGATA という空間があるのを見つけました。入口の銘板に、こう刻まれています。Is a place where people can be themselves.
のぼりが立っていました。荒川尚也さんのガラス展、「Midsummer’s glass / 夏のさなか」。
入ってみます。

黒い梁の下、ガラスの器がずらりと並んでいました。グラス、鉢、皿。どれも同じ形はなく、気泡が閉じ込められて、光を通すたびに表情が変わります。天井から下がる灯りもガラス。
目にも涼しげなガラスの作品たち。



奥に、一匹の魚がいました。ガラスの鱗を一枚ずつ重ねた、腕ほどの長さの魚。〈かなしみの魚〉という題がついています。

箒目の入った白砂に、睡蓮を浮かべた鉄の鉢。その脇の石に、ガラスの一枚がすっと挿してあって、光を受けていました。

二日前、天井の白龍を見上げたところから始まって、色の写真を見て、器を見て、最後にガラスを見ている。祭の三日間に、こんなに絵を見るとは思っていませんでした。
持ち帰ったのは、お香スタンドをひとつ。旅で買ったもののなかで、いちばん軽くて、いちばん長く残るものになりました。

山鉾の帰り道に出会う
宿へ荷物を取りに戻る途中でした。
向こうから、山鉾が帰ってきます。鷹山でした。巡行を終えて、町へ戻るところです。


赤い胴懸に、ペルシャの絨毯。屋根の上に人が立って、囃子方が並んで腰かけ、「鷹」の房が揺れています。曳き手の人たちは、朝と同じ法被のまま。誰もこちらを見ていません。ただ、帰っていくところでした。
最後にすれ違ったのが、役目を終えて帰る山鉾だったというのは、なんだかできすぎた話です。
京都駅へ
四条から地下鉄で京都駅へ。
Porta の大垣書店をのぞきました。京都の本ばかり並んだ平台に、『ひとり晩ごはん京都』という一冊。京都駅、祇園、河原町、四条烏丸——載っている地名を、この三日でいくつも歩いていました。
おみやげは、いつもの大徳寺さいき家で、さば寿司とだし巻きのお弁当。福寿園で抹茶ラテを一杯。窓の外に、京都タワーが立っていました。





そして、駅の吹き抜けに、提灯が並んでいました。
長刀鉾、郭巨山、占出山、山伏山、函谷鉾……三段の枠にずらりと、三十三基ぶんの名前。いちばん下の列に、後祭の山が並んでいます。橋弁慶山、北観音山、鯉山、八幡山、浄妙山、南観音山、鈴鹿山、役行者山、黒主山、鷹山、大船鉾。
帰りの京都駅で、山鉾の名前に会いました。


14時40分、サンダーバード。
京都駅で時間が余ったときの過ごし方は、こちらに。

家に帰って
荷ほどきをして、玄関にちまきを掛けました。鷹山と、鯉山。「蘇民将来子孫也」と刷られた紙が巻いてあります。小さな絵馬も一緒に。
これで一年、この家は守られることになります。
鯉山のお守りは、宵々山の夜に鯉山の素敵な方に教えてもらった通り、願いごとを思いながら、紐を結びました。叶いますように。
三日間の山鉾を見ていない時間は、ナビを外れた道、住所がそのまま名前の店、寝ころんで見上げた龍、九つの豆皿、カメラの話、二晩通ったビストロ、間に合わなかったあばれ観音。祭のあいだの、祭ではない時間です。
けれど、どこへ行っても祇園祭はいました。カメラ屋の軒の御神酒、ビストロの木戸のちまき、町家の幕の鯉。祭は山鉾の上にあるのではなくて、この町の日常のほうに、ずっといたのだと思います。
次は二回目の前祭に、と思っています。そのときもきっと、山鉾を見ていない時間のほうを、たくさん歩くのかもしれません。


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