青もみじの貴船神社さんぽ|水占みくじと、川床カフェの一服【6月の京都】

貴船神社の参道。朱塗りの灯籠がずらりと並ぶ石段と、青もみじの木漏れ日 京都トレイル・散策



※本記事にはプロモーションが含まれます。

 訪れたのは六月一日。この日の貴船神社は、年に一度の「貴船祭」でした。

貴船、と聞くと、京都の奥座敷の朱塗りの灯籠が並ぶ石段、貴船川のせせらぎ、鴨川の源流、川床(かわどこ)のにぎわいを思い浮かべる方が多いかもしれません。夏の風物詩、涼やかな川の上の席。貴船の魅力です。

その貴船に「人々のいない静かな時間」があるのを、ご存知でしょうか。

朝、七時すぎ。お店が床(ゆか)の支度をはじめる前の貴船は、川の音と、青もみじと、自分の足音だけの世界です。

 始発に近い電車に乗って向かった、6月の早朝。本宮・結社・奥宮をめぐる三社詣(さんしゃまいり)と、まだ人のいない川床でいただいた、一杯の冷たいお抹茶。——静かな貴船の、いちばん好きな時間の話を、すこし。

貴船神社の朱塗りの鳥居と「總本社 貴船神社」の社号標、青もみじと朱色の灯篭

なぜ”早朝”の貴船なのか

 6月の貴船は、ちょうど川床がはじまる季節です。日中はバス停に列ができ、川沿いのお店もにぎわいます。

 それでも、貴船を「静かな場所」として過ごせるのは、朝に行くから。京都の街と山あいを歩くのが好きで、これまでも千本鳥居の先の伏見稲荷大文字山を歩いてきました。貴船も、その延長線上にある、静かな場所です。

 その朝は、京都駅から地下鉄烏丸線で終点の国際会館駅まで行き、そこから歩いて、叡山電車の岩倉駅へ。叡電に乗り換えて、貴船口駅に着いたのは7時半すぎでした。駅から貴船神社までは、バスもあります。でもこの時間は、まだ動き出す前。だから、川沿いの道を歩いて向かうことにしました。歩いて、30分ほどです。スニーカーの足元でゆるやかな坂道、舗装された道をハイキングです。

 いい時間です。貴船川のせせらぎが、だんだん近くなって。青もみじの木々の間から落ちてくる光が、まだやわらかく、すれ違う人はも、追い越して行く人も、誰もいません。

6月の貴船、見上げた青もみじの新緑と青空


貴船川沿いの簾塀の道に並ぶ左源太の提灯と青もみじ

貴船口駅から、川沿いを歩いて

貴船口の駅を出ると、目の前はもう山あいです。道は一本、貴船川に沿って、ゆるやかに上っていきます。車だと一瞬で過ぎてしまう道のりも、歩くと、川がだんだん近くなっていくのがわかります。

 途中に、「蛍岩(ほたるいわ)」と書かれた小さな石碑がありました。その昔、和泉式部(いずみしきぶ)がこのあたりで蛍を眺めたと伝わる場所だそうです。——その名前は、このあと結社(ゆいのやしろ)でもう一度出会うことになります。

 烏帽子岩(えぼしいわ)を過ぎ、鞍馬寺の西門の前を通り過ぎて、さらに上へ。6月の貴船は、なんといっても青もみじです。頭の上いっぱいに広がる緑が、朝の光を透かして、足元まで青く染めてくる。川音と、葉ずれの音だけ。

貴船口から貴船神社へ続く山あいの車道。石垣と新緑、青空
貴船川にかかる「梅ノ宮橋」の赤い親柱と、川沿いの新緑

 
 川沿いのお店に川床が敷かれていました。「夏のはじまり」です。そうして、歩いていくと——朱塗りの灯籠(とうろう)が、石段の両脇にずらりと並ぶ、あの景色が見えてきます。貴船神社の、本宮です。

貴船神社の参道。朱塗りの灯籠がずらりと並ぶ石段と、青もみじの木漏れ日

本宮 ─ まずは、お参りだけ

 朱塗りの灯籠が並ぶ石段をのぼると、本宮(ほんぐう)です。朝いちばんの境内は、ひんやりと澄んでいて、まだ誰もいません。授与所の窓も、閉じたまま。聞こえるのは、自分の柏手(かしわで)の音だけ。

貴船神社の受付や授与がはじまるのは、朝9時から。だからこの時間は、まずはお参りだけ。手を合わせて、わたしは奥へと足を向けました。

【早朝に行くなら】授与所・水占・御朱印は朝9時から
早朝に着いたら、本宮にお参りだけ済ませて、結社・奥宮をめぐり、9時ごろ本宮へ戻ってくるのがおすすめ。わたしも、この順で歩きました。

【9時、本宮へ戻って】ご神水と、水占みくじ

三社をめぐり、9時すぎに本宮へ戻ると、ようやく授与所が開いていました。

 貴船神社は、水の神さま「高龗神(たかおかみのかみ)」をお祀りするお社。本宮には、清らかなご神水が湧いています。口に含むと、やわらかくて、冷たい。持ち帰る方も多い、ありがたいお水です。

貴船神社のご神水を竹の樋からボトルに汲むところ。紙垂と苔

 

水に浮かぶ、貴船神社の水占い

 そして、このご神水で引くのが、貴船名物の水占(みずうら)みくじ。受け取ったときは、ただの白い紙。ご神水にそっと浮かべると……ゆっくりと、文字が浮かび上がってきます。

 この時のみくじに出たのは、「望みは叶う時を待て」。そして、「転居 ── よろし」。……静けさのなかで読むと、ぜんぶ見透かされているようで、ちょっと、どきっとしました。

貴船神社のご神水を竹の樋からボトルに汲むところ。紙垂と苔

 

 それから、御朱印をいただいて、**ご神塩(ごじんえん)**も。お清めや盛り塩に使う、昔ながらの授与品です。玄関にひとつまみ。旅から帰ったあとも、あの朝の清らかな空気を、すこしだけ持ち帰れた気がします。朱塗りの灯籠が並ぶ石段をのぼると、本宮(ほんぐう)です。朝いちばんの境内は、ひんやりと澄んでいて、まだ誰もいません。自分の柏手(かしわで)の音だけが、ぱん、と響きました。

貴布禰総本宮 貴船神社」の御朱印を納めた紙袋

結社(ゆいのやしろ)─ 縁を結ぶ、和泉式部

 本宮から、川上へ。少し歩いた中ほどにあるのが、**結社(ゆいのやしろ)**です。

ご祭神は、磐長姫命(いわながひめのみこと)。古くから「縁結びの神さま」として知られ、恋の願いをかける人が、今も絶えません。

貴船神社・結社(中宮)の朱の鳥居と、赤い灯籠が並ぶ石段



 ここには、ひとつの物語があります。平安の歌人・和泉式部(いずみしきぶ)。夫の心が離れてしまったとき、彼女はこの結社にお参りして、復縁を祈ったと伝わります。——そう、川沿いで見かけた、あの「蛍岩」。あそこで詠んだとされる歌が、これです。

もの思へば 沢の蛍も わが身より あくがれ出(い)づる 魂(たま)かとぞ見る

(もの思いに沈んでいると、沢を飛ぶ蛍さえ、わたしの身から抜け出した魂のように見えて――)

 

貴船神社 中宮「結社」の由緒書き。御祭神・磐長姫命と和泉式部の伝説

 

 そして、その願いは叶ったのだとか。千年前の恋の祈りが、いまも残っている場所。誰もいない朝に立つと、その静けさが、いっそう胸に沁みます。

【ちいさな豆知識】三社詣の順番
貴船の三社詣には、正式な順番があります。本宮 → 奥宮 → 結社。願いごとを最後に「結ぶ」よう、結社をしめくくりにするのだそうです。(わたしはこの日、本宮→結社→奥宮と歩いてしまいました。次は、ちゃんと順番どおりに。)

奥宮 ─ 貴船のはじまりの場所

結社から、さらに川上へ。歩くほどに、人の気配もお店の灯りも消えて、あたりは深い緑に沈んでいきます。

奥宮ねの、新緑につつまれた石畳の参道



 参道の手前に、「思ひ川(おもいがわ)」という小さな流れがありました。その名のとおり、かつて参拝の前に、人々が身を清めた川だそうです。和泉式部も、ここで思いを清めてから、お参りしたのかもしれません。

貴船・思ひ川(おもいがわ)橋















橋を渡り、木立のトンネルを抜けると——奥宮(おくみや)。じつはこの奥宮こそ、貴船神社が最初に建てられた、はじまりの場所なのです。

貴船神社 奥宮の朱塗りの神門と、新緑につつまれた石畳の参道

 
 
 本殿の真下には、「龍穴(りゅうけつ)」があると伝わります。誰も見てはならないとされる、聖なる穴。日本三大龍穴のひとつ。……見えないからこそ、足元から静かな力が立ちのぼってくるような気がして、思わず、背筋が伸びました。

そばには「船形石(ふながたいし)」。神さまが黄色い船に乗って川をさかのぼり、この地にたどり着いて、その船を小石で覆い隠した——そんな伝説の石です。

貴船・奥宮 舟型石

 

 朝の奥宮には、鳥の声と木々のあいだから落ちてくる、やわらかな光。ここが、すべてのはじまりの場所。そう思うと、ただ立っているだけで、胸の奥まで澄んでいくようでした。

貴船・奥宮 青もみじと山門



三社をめぐり終えて、時刻は10時すぎ。せっかく貴船まで来たのだから、やっぱり川床(かわどこ)で過ごしてみたい。でも、ハードルの高いお料理コースは、ちょっと。

川床カフェで、貴船を満喫

開店直後の誰もいない左源太の川床。赤い提灯と座卓が並ぶ川の上の座敷と青もみじ

 

 見つけていたのは、**川床の”カフェ”**です。

 今回、おじゃましたのは、老舗の「左源太(さげんた)」。川床というと、何千円もする会席料理のイメージですが、ここでは、お茶や軽いお品で、気軽に床の上の時間を過ごせます。

左源太店内・建築家フランク・ロイド・ライトの照明


 

 川床でいただいたのは、**冷抹茶(890円)**と、鮎(あゆ)の唐揚げ(1,350円)。食事の提供は、11字からということで、まずはさらさらと泡立つ冷たいお抹茶が、歩いて火照(ほて)った体に、すうっと沁みます。鮎は、貴船ならではの一皿。からりと揚がって、頭からまるごと。

貴船・左源太の川床でいただく冷抹茶。左源太のロゴ入りカップと川のせせらぎ

 

貴船・左源太の鮎の唐揚げ。ししとうとレモンを添えた一皿と背景の川床

 

 川床は、川面のすぐ上。手を伸ばせば届きそうなところを、水が流れていきます。気温は、街なかよりずっと低い。青もみじが、頭の上いっぱい。せせらぎの音が、ずっと、すぐそこにある。マイナスイオンを全身に浴びている気持ち良さです。

左源太の川床の席。川面のすぐ上の座卓と、簾の橋・貴船川の流れ



【知っておくと安心】 <予約不要>
川床に面した席には、席料がかかります。
左源太では、セルフサービスの席料お一人様700円。お料理やお茶のほかに、席料が700円。川床を味わうための”特等席の場所代”のようなものです。この日の合計は、冷抹茶+鮎の唐揚げ+席料で、2,940円でした。
貴船川床最上流席1,500円(限定3席・特製団扇・タオル付き)、こちらは事前予約可のようです。
・10時30分オープン前から、開店を待つ人が並び始めます。10時過ぎには店の前で並んでおくと、川床に面した席が取れるかもしれません。

貴船川に裸足で足をひたすところ。冷たい清流と苔


 朝いちばんの川床は、まだ、ほとんど人がいません。にぎわう前の、いちばん静かな床を、ひとりじめ。——これが、早朝に来たごほうびでした。

静かな貴船を持ち帰る

 川床を後にしたのは、お昼頃。バス停へ向かうころには、貴船の道に、かなりの人が増えていました。車も多数、狭い道幅ですれ違えずに渋滞が始まっていました。これから、にぎやかな一日がはじまるのでしょう。

 鞍馬寺の西門の前を通って、バスで貴船口駅へ。叡山電車に揺られて、出町柳まで。——そこからは、鴨川沿いをのんびり歩いて帰ったのですが、それはまた、別のお話。

 振り返ってみると、貴船で過ごしたのは、たった数時間。それでも、誰もいない参道、文字の浮かぶ水占みくじ、ひとりじめの川床。朝の光のなかで出会った貴船は、ぜんぶ、わたしだけのものでした。

「混んでいるから」と敬遠していた場所も、時間を選べば、こんなにも静か。次に貴船へ行くなら、ぜひ、いちばん静かな朝に。あなたにも、あの澄んだ空気を、持ち帰ってもらえたらと思います。

貴船と山ひとつ越えてつながる「鞍馬寺」へも、この西門から歩いていけます。その話は、また次の一篇で。

貴船から鞍馬寺への西門


 貴船と山ひとつ越えてつながる「鞍馬寺」へも、この西門から歩いていけます。じつは、この貴船を歩いた前日の午後、わたしは鞍馬山にいました。五月満月祭の日、金剛床に立った静かな半日のこと。よかったら、そちらの話も。
👉 午後から登る鞍馬寺|五月満月祭と、金剛床で満ちた満月のエネルギー【5月の京都】

 そしてさらにその前の日、旅の初日は、街なかでアートをめぐっていました。版画と詩と、金色の鳥居。その一日の話も、よかったら。

👉 京都ひとり旅・アートをめぐる一日|ミナ ペルホネン・山本容子展・茨木のり子展と御金神社【5月の京都】


🚃 アクセスボックス

貴船神社へのアクセス

【基本ルート】
叡山電車 出町柳駅 →(鞍馬線・約30分)→ 貴船口駅 → 京都バス(貴船行き)で約5分、または川沿いを徒歩約30分 → 貴船神社・本宮

【わたしが歩いたルート】
地下鉄烏丸線で終点・国際会館駅へ → 徒歩約10分 → 叡山電車 岩倉駅 → 貴船口駅。出町柳を経由しない、ちょっとした近道です。

【三社詣のコツ】 受付・授与・水占・御朱印は朝9時から。早朝は先に本宮へお参り → 結社・奥宮 → 9時に本宮へ戻る、の順がスムーズ。

🍵 店舗情報ボックス

※料金・内容は2026年6月時点。最新は公式サイトでご確認ください。

貴船 左源太(さげんた)(左源太(貴船川床最上流Cafe))

川床での食事のほか、**お茶や軽いお品での”カフェ使い”**ができますこの日の注文:冷抹茶 890円/鮎の唐揚げ 1,350円/席料 700円(計2,940円)

住所:京都府京都市左京区鞍馬貴船町91
電話:075-741-2244 営業時間:10:30-17:00(お食事は11時からの提供 )不定休

左源太・川床カフェ外観・看板


         

 
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