伏見から電車を乗り継ぎ、降り立ったのは清水五条駅。
冬の京都は日が落ちるのが早い。少しだけ冷たさを含んだ空気の中、15分ほど歩く。
目的地は、事前に友人と約束していた一軒の店。
派手な看板はない。ただ、あたたかい灯りと、どこか懐かしい佇まいが目印になる。
初めてのお店への期待と緊張と一緒にその引き戸に手をかける。
店内はカウンターのみ。
席数も限られていて、まさに“知る人ぞ知る”という空気が漂う。
迎えてくれるのは、ご夫婦の店主。
気さくで、ほどよい距離感。その空気が、この店の居心地を決めている気がする。
まずは、生ビールから。
冷えた一杯が、今日一日の流れをほどいてくれる。

最初の一品は、柴漬けタイプの鯖寿司。
しっかりと締まった鯖に、ほんのりとした酸味と香り。
いきなりこの一皿で、この店のレベルがわかる。
続いて、牛すじのおでん。
じんわりと染みた出汁と、ほろりとほどける柔らかさ。
冬の京都に、これ以上ない一品だ。

蓮根のはさみ揚げは、衣の軽さと厚みのある蓮根が贅沢で印象的。
サクッとした食感のあとに、しっかりとした旨みが追いかけてくる。
黒酢豚は、コクと酸味のバランスが絶妙。
家庭料理とは違う、“ちゃんとした仕事”を感じる味。
そして、少し意外性のある一皿。イカ墨パスタ。
和の流れの中にすっと入ってくるこの一品が、不思議と浮かない。
むしろ、この店の懐の深さを感じる。

締めは、店主渾身のチーズケーキ。
濃厚でありながら、重すぎない。食後にちょうどいい余韻を残してくれる。
観光地としての京都とは、少し違う顔。
静かで、無理がなくて、ちゃんと美味しい。
こういう店があるから、また京都に来たくなる。
席数も少なく、人気もあるため予約は必須。
けれど、その手間をかけてでも訪れる価値はある。
ごちそうさまでした。


酒処 籠目
京都・清水五条にある、小さなカウンターメインの酒場。
ご夫婦で営む、気取らないけれどしっかり美味しい一軒。
席数が限られているため、予約はほぼ必須。
https://kagome-kyoto.com
・アクセス:京都市営地下鉄 五条駅:徒歩6分/四条烏丸交差点から:徒歩8分
・カウンター席:7席 テーブル席:4席(ご予約頂いた場合のみ)



コメント